*** ゴールド:クリスタル


「ゴールド、なんでそんなに怒ってるのよ。」

クリスがそう言ったのはずっとゴールドがあぐらを組んでふくれっ面をしているからだ。

「べつに。怒ってねー。」

なによ、怒ってるじゃない、とクリスは思いながらどうしたものかと考えていた。


せっかくのバレンタインなのにこれでは作ったチョコも渡せない。


けっこう気合いれて作ったんだけど。

・・・でも、ふだんお世話になっている先輩方や後輩にもやるチョコが
まだ残ってるし、先にやってこようかな。
ゴールドには全部終わってからゆっくりあげたいし。
あとはレッド先輩とルビーくんと・・・


クリスがいそいそとラッピングしているとゴールドが言った。


「オレ、チョコいらねーから。」


それはクリスには予想外の言葉だった。

「え・・・。」


あまりの衝撃に言葉がでなかった。
いつものことなら『せっかく人がやるっていうのに』と気丈に言い返すこともできるのだが
今回はどうしたのか、強気に言い返すことができない。


ここ最近、ずっとチョコチョコ言っていたくせに何で・・・。

なんだかわけが分からなくて、でもどうしようもなく悲しくなって
クリスは泣き出した。


・・あれ、なんでこんなことで泣いてるのよ・・・わたし・・・。



「え、」

ゴールドはクリスが泣き出してしまったのが予想外だったようで慌てている。
そしてバツが悪そうな顔をして、クリスに歩み寄った。

「お、おい、クリス。」
「・・・う・・なんでよ・・・ック、なんで・・・うぅ」

クリスはとめどなく泣き続ける。


「お、オレが悪かったって。おい泣くな。」
「・・・いらないならっ・・・最初から言いなさいよ・・ヒック」
「・・・だから、それは!・・・・。」
「・・ック・・・何よぉ・・。」

ゴールドはしばらく経ってから言いづらそうに言った。



「・・・おまえが他の男にもやるから、チョコ・・・。」


「へ?」
「・・・あーかっこわる。」

ゴールドは頭をかきながら顔を赤くしている。
クリスはすこし瞳が潤んでいるものの、いつのまにか泣き止んでいた。

「・・・それって・・・やきもち?」
「あー・・・もう!知るか!」

やけになってゴールドは怒鳴った。



そして耳まで真っ赤になっているゴールドを真っ直ぐ見つめ、クリスは言った。


「・・・好き。」


クリスは言い馴れない言葉に顔を真っ赤にしている。
そして手に持っていた箱で顔を覆い隠した。

「・・・その言葉に免じてさっきの言葉は帳消しにしてやる。」
「さっきのって・・」
「チョコ、くれよな。」

ゴールドはそう言ってチョコを受け取り、クリスを抱きしめた。




*** ルビー:サファイア

「サファイア、何してんの。」

サファイアが自分の部屋にいるとルビーがいつものごとくやって来た。

「なっ、ルビー、どこから入ってきたと!」
「玄関からに決まってるでしょ。オダマキ博士が入れてくれたんだよ。」

父ちゃんのばか〜!
今日はルビー、入れんでって言っとったのに。

でもまぁ、よか。あとは箱に詰めるだけやけんね。

そう、今日はバレンタインデー。
サファイアはルビーに内緒でチョコを作っていたのだ。
とりあえずチョコは四苦八苦しながらもなんとかでき、後はラッピングだけとなっている。

「何しに来たと?」
「うん、今日はバレンタインでしょ。君にチョコ作ってきたんだ。」
「え、」

はい、と差し出された袋。きれいな色のリボンがつけられている。
透明な部分から形のいい、おいしそうなチョコブラウニーが入っているのが見える。
サファイアには、なんだかすごく輝いて見えた。


こぎゃんと見せられたら、あたしのなんかやれんったい・・・。


「・・・?サファイア?」
「あっ、何でもなかとよ、ありがと。」

しかしその表情は曇っていた。
ルビーはそのサファイアの表情を見逃さなかった。

「どうしたの?なんかあった?」

真剣な表情でルビーが問いかけた。

「何でもないって言いよるやろ。」
「じゃあなんでそんな顔するんだよ。僕からの、そんなに不服だった?」
「そうじゃなかと。嬉しいったい。ただ・・・」

サファイアはうつむいて言った。


「ただ、ルビーのがあまりにも上手やけん。」
「え?」


「やけん、その・・・あたしも作ったと。・・・・チョコ。」


サファイアは依然うつむいたまま、手混ぜしながら言った。
髪の間からみえる耳が赤くなっている。


「で、どこにあるの?そのチョコは。」
「え?」

顔を上げるとルビーが真っ直ぐに見つめていた。

「作ったんでしょ。ちょうだいよ、君がつくったチョコ。」
「でも、あたしのあんまり上手くできんかったし・・・。」
「いいから。」

サファイアは躊躇しながらもとキッチンに向かい皿にいれてもってきた。

サファイアは決まりが悪そうにこれ・・・と言って机の上に置いた。
少し形が崩れているがハートのチョコケーキだ。


「やっぱり、こぎゃんと・・・」

サファイアが言いかけると、ルビーはそれをひょいと手でつかんで口に持っていった。

「あっ・・・!」
「ん〜形は悪いけど味はいいよ。おいしい。」

ルビーはサファイアの言葉も気にせずサファイアがつくったチョコケーキを食べている。

「・・・ほんと?」

サファイアは信じられないといったように訝しげな目をしてルビーをうかがった。

「うん、すごくおいしい。」

ルビーは口元をゆるめて優しく笑う。
そして「ほら」とケーキを一口分ちぎってサファイアの口に入れた。

「!!?」

かすかにルビーの指が唇にふれて、サファイアはボボボッと顔を真っ赤にした。

「どうしたの?」
「・・・っなっんでもない!」


そしてしばらく経ってからルビーがぽつりと言った。

「あのさ、僕は君の気持ちだけで十分嬉しいんだからね。」
「?」

少しルビーは照れながら言う。

「だから、チョコが不恰好でも、ラッピングされてなくても、もらえただけで嬉しいんだよ。」

サファイアはルビーの優しい言葉を聞いて自然と笑顔になった。

「ありがと、ルビー。」

ルビーもサファイアにつられて笑った。
そして不意打ちにキスをした。

「・・・〜〜っ!」
「可愛すぎる君が悪いんだからね。」

その後ふたりは仲良くお互いのチョコを食べた。




***

カントー組につづいてこの4人。

ゴークリ。
クリスは律儀だからみんなにチョコやってそう。
もちろん女の子にもやりますよ、この子。
そんでゴールドは絶対嫉妬するんだぜ。
いつもケンカばっかしてるふたりだけど、たまにはこんな二人もいいと思う。
ふたりともすごいシャイだと思うよ、好きな人の前では。
この二人はルサに次ぐくらい好きだ。

そしてルサ。
あ゛ーすごいこの2人は甘くなってしまった。
バレンタインなだけに(誰が上手いこと言えと)
サファイアは乙女なので照れるよ、ちょっとしたことでも。
でも自分は無意識に見てて恥ずかしくなることしてるよね、葉っぱの服とか。
ルビーはそんなサファイアが愛しくてたまらないんですよ。
この2人はずっといちゃいちゃしていれば良い。


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